台湾の友人らと香山に登った。
香山は北京大学の西北に位置する小山で、秋の紅葉で有名である。
事前に色々な人から情報収集したところ、紅葉のピークについては人それぞれ言うことが違い、11月半ばまで待つべきだという人もいれば、10月下旬にはピークを過ぎているという人もいた。
今回行ってみた限りでは、後者の説が正しかったのだと思う。
ただし、それ以前の問題として、そもそも香山の紅葉は美しくも何ともないのではないかということも、行ってみて理解された。結論を先取りすれば、香山には行く必要がない。
一面が真っ赤に染まる日本の紅葉のイメージとは全く異なり、香山に生えている木の多くは常緑樹で、たまに赤らんでいる木がある程度である。遠目に見たときの紅緑比は3:7程度であったと思う。
そして、人が多すぎる。
そもそも、北京大学からの行きのバスは満員で乗れず、タクシーで行けば渋滞に巻き込まれた。帰りのバスも満員で乗れず、香山公園の出口から1時間以上も歩いた地点でようやく我慢できる価格の白タクがつかまるという始末であった。
登山道は人が詰まって歩けなくなるほどである。ただでさえ人が多い上に、道をふざぐように座って休憩する人や、前の人を押しのけて進もうとする人などが入り乱れていた。
さらには、たまにある紅葉の木には写真を撮ろうとする人々が群がり、あまり丈夫そうではない木によじ登る者や、ひどいのになると枝を引っ張り揺すって、葉を落として楽しんでいる者すらいて、もはや事態は混沌の体をなしていた。
これに付随する現象として、山肌はゴミだらけである。
打ち捨てられているゴミの主要成分は「食べかす」である。ミカンの皮やトウモロコシの芯、ヒマワリの種など。
しかし、これらは実に見苦しいながらも、天然物だからまだいい。一番ひどかったのは、アイスの袋がそこら中に捨てられていたことである。
登山道には、アイス売りがたくさんいた。
この1週間ほど寒い日が続いていたのだが、今日はなぜか暖かかった。山に登るので厚着してきたのだが、脱いでリュックに押し込む羽目になってしまったほどである。
そんな天気のせいか、アイスは良く売れていた。
クーラーボックスでも何でもない、ただの段ボール箱に詰め込まれた袋入りの棒アイスがあちこちで売られているのだが、登山客たちはそれを買ってはすぐに袋をその場に捨てていた。
1本1元(約17円)と実に怪しいのだが、周りの中国人たちが美味しそうに食べているので、「みんなで食べれば怖くない」という結論に至り、我々もメンバー全員で買うことにした。
種類は白いのと赤いのの2種類で、私は赤いのを選んだ。「大紅果(サンザシ)」味とのことである。白いほうは何味かすら書かれていない。
食べてみたところ、味は昔の駄菓子っぽい感じで、まあ不味いわけではない。
しかし、食べ進めていくうちに、我々は奇妙なことに気がついた。
時間が経っても、全然溶けてこないのである。
先ほど書いたとおり、今日は比較的暖かく、気温は10度以上あったはずである。常識的には、これは氷が溶ける温度である。
よくよく考えてみれば、段ボール箱でアイスが売られていること自体がおかしい。彼らは朝から商売をやっているはずだが、我々が買ったのは午後の3時過ぎである。
おそらく、我々が食べてしまったものは、保冷剤か何かに味をつけたものだったのだろう。
ちなみに、全く同じ袋のアイスが売店の冷凍ボックスでも3元で売られていたが、それが正規のアイスかどうかも怪しい。どうせ同じものだろう。
誰も腹をこわさなかったのが不思議である。意外と日本でも気づかぬうちに同じようなものを食べているのかもしれない。