国慶節旅行「遵化」編の、「意外なプロ意識」についての話の続き。
到着した遵化は、唐山北に比べればずいぶんにぎやかな街だった。
北京への帰りのバスが出ている大きなターミナルの近くに宿をとるべく、大通りをしばらく歩いたのだが、服屋が多く並び、人通りも多く活気がある。
宿は、地図に書いてあった「招待所」を、まずは見てみることにした。
到着してみると、どうやら廃校になった学校(「中央農業広播電視学校・遵化分校」と書いてあった気がする)を利用して、招待所だけが辛うじて営業を続けているようだった。
上の写真は校舎部分。おそらく卒業生の中に尾崎豊がいたのだろう。
宿泊施設部分はこんな感じで、なんと一人一泊15元(約250円)だという。シャワーはないし、男子トイレは最悪な状態だったが、1泊だけなら我慢しようということで、ここに泊まることにした。
しばらく休憩した後、食事に行った。レストラン街の中から、私の希望で「老鴨湯」を出す店に入ることにした。以前の記事でも書いた、杭州の「老鴨湯」の味が忘れられなかったからである。
ここの「老鴨湯」は、私が前に食べたのとは少し違うシステムで、鴨1匹がまるまる煮えている大鍋に、自分で好きな具財を注文して入れるという、「火鍋」に近い形式だった。
ここで我々は、「鍋奉行」による強力な統治下に置かれることになる。
この「鍋奉行」とは、我々のテーブル担当になった、きわめてプロ意識の高い、若いホール・スタッフのことである。
奉行はまず、鴨肉の煮えたスープをよそってくれ、その味を楽しむよう我々に指示した。あっさりとしていて、非常に美味しいスープである。
次に奉行は、鴨肉を箸で分解し、我々の小皿によそってくれた。全員に均等になるよう、何度もお玉ですくい分けてくれる。
続いて奉行は、我々の注文した羊肉と牛肉を、すべて鍋の中に入れた。なぜ肉ばかり先に入れるのかと聞くと、そうすることによってスープの味が良くなるからだという。
野菜も一緒に食べたいところであったが、彼女の言うことにも一理はあり、スープの味は確かにコクを増し、まろやかになっていった。
肉の配給が終わると、奉行は我々のテーブルから50センチくらいの位置にぴったりと立ち、我々を監視する体勢に入った。
ビールやお茶が少なくなってくるとすぐに注いでくれ、我々が脇に用意されている野菜に目を移すと、すぐにそれを察知して、皿ごと鍋に入れてくれるのだった。
客には「食事を楽しむ」以外のことは一切させまいとする、強いオーラが彼女からは発せられていた。
メンバーの一人は、お茶やビールを注いでもらうたびに「謝謝」と言っていた。しかし、そんな言葉に奉行は、笑って「我是服務員(私は服務員です)」と答えるのだった。カッコいい。
結局、すべての工程は奉行の監視・指導下で進められ、我々は満腹になって帰路についた。もちろん、奉行は最後に我々に「慢走(お気をつけて)」と言うのも忘れなかった。「慢走(マンゾウ)」を言うか否かは、中国のお店の接客の良さを判断するのに便利な基準である。
常に見られている居心地の悪さもあったが、とても美味しく楽しい食事であった。