午前中は国家図書館で資料のコピーを取り、昼前くらいに柔道の試合を見るべく北京科技大学に向かった。
やわらちゃんの日には手に入らなかったチケットだが、試合開始1時間半前にくらいに到着したところ、今日は首尾よくダフ屋にめぐり会えた。
このダフ屋、流暢な日本語で話しかけてきて、今日のチケットを持っているという。
予選と決勝はチケットが別になっており、彼が持っているのは予選の方。1枚600元(1万円弱)と言う。
昨日会った日本人観光客は、原価50元のバトミントンの予選チケットがダフ屋で500元だったというので、まあこのくらいが相場なのかもしれない。
先輩が来るのを待っていたので、そのダフ屋と話をしていると、彼はJTBのツアー・ガイドであると名乗り、名刺を見せてくれた。そんなものはそこらの印刷屋でいくらでも偽造できるが、一応本物っぽいロゴはついていた。
日本語と中国語のちゃんぽんでしばらく会話していると、俺の話している相手がダフ屋であることを察した他の外国人たちが寄ってきて値段交渉を始めた。
これはまずいと思い、慌てて2枚で800元と言ったところ、先方は簡単にうなずいた。
チケットにはもう少し余りがあるらしく、その後も彼は複数の外国人と交渉していたが、1枚60ドルよりは下げていなかったので、まあはじめからこのくらいの値段で手を打つ気だったのだろう。
なお上の「2枚で800元」というのは、あくまで実態調査として最低価格を確認しただけである。実際にはこの直後、私は元々チケットを2枚持っていたことを思い出すと同時に、なぜか私と先輩の財布から400元ずつなくなっていることに気付いた。
ダフ屋行為は当然違法であるが、入口前に詰めているボランティアの人に「当日券はどうやって手に入れるのだ」と聞いたら「個人的に譲ってもらえ」との回答が返ってきた。正直さをほめるべきか、教育の不行き届きを糾弾すべきか。
こうして、私と遅れてきた先輩は、親切なJTB社員に「案内」してもらい、会場に入ることができた。
席に着くと、すぐ近くに50人規模の韓国の応援団が固まっていた。
彼らは韓国の国旗を大いに振り回し、韓国選手の試合が始まると総立ちで応援した。
すると、当然後ろの席の人は試合が見れなくなってしまい、みんな直接文句を言うのだが、彼らは耳を貸そうとはしなかった。
途中、よほど見かねてか、中国の会場スタッフが彼らを説得し、この韓国応援団をまるまる最後方へ移動させていた。このおかげで、彼らも思う存分応援を続けることができ、我々他国人の観戦の平和も訪れた。
韓国応援団は、我々の近くだけでなく、ほかの場所にもいっぱいいたようである。
柔道は韓国にとって、メダルを期待できる重要競技のようだ。自己中な応援団は周りの客にとってはいい迷惑ではあるが、選手の立場からすれば、これだけ熱く応援してもらえるのはきっと幸せである。
なお、韓国応援団は、北朝鮮の選手の試合では「ウリネ!ハナダ!」と声をそろえて応援していた。韓国語は分からないので聞き間違いかもしれないが、「我々はひとつだ」という意味だろうか。
ついでに書いておくと、日本選手が負けると歓声である。
さて、日本の金丸選手、佐藤選手は残念な結果になってしまったが、両者ともに敗者復活戦には残れたので、時間めいっぱいまで日本選手を応援できたのは不幸中の幸いだった。
予選終了後、私は先輩と別れて別の友人と合流した。
この友人の入手した情報によると、地下鉄が一番テロの標的にされているとのことなので、タクシーで食事に行くことにした。そうか、地下鉄は危なかったのか。昨日まで何度も乗っちゃったじゃないか。
タクシーは危険にさらされることもなく、我々は無事に北京中心地の東の方、朝陽公園付近の日本料理屋街に到着し、お好み焼きとラーメンを楽しんだ。
北島が金メダルを取ったとのことで、お好み焼きは1枚無料だった。ありがとう、中国名“蛙王”北島。
(北京科技大学体育館)
(前の人たちはほとんど韓国の応援団。向正面は空席だらけ。)