今日は朝から、天津人の友人がわざわざ仕事を休んで観光案内してくれた。
彼によると、天津の名物は食べ物ばかりであるという。
たしかに、天津という街は、近現代史に興味がない人にとっては、特にこれといった観光名所がないかもしれない。
今日はまず、ラスト・エンペラー溥儀が退位後に住んでいた旧宅を再現した「静園」に向かった。この旧宅は、1960年代の文化大革命以降(たしか)民家として使われてきたものを、再び溥儀が住んでいたころの様子に修復した観光地である。
ここへ向かう途中、腹ごしらえに露店で「耳朶眼」を買ってもらった。
あんこ餅を油で揚げたようなお菓子で、「ゴマ抜きゴマ団子」といえば分かりやすいかもしれない。出来立ては熱々トロトロで、かなり油っこいが非常に美味しい。
一般的に、天津名物としてよく紹介されるのは「狗不理包子」と「麻花」で、これに「耳朶眼」を加えて「天津三絶」と称される。「三大うまいもの」くらいの意味である。
「狗不理包子」は、要するに「肉まん」である。「狗不理」という老舗の肉まんが有名なせいで、天津ではあちこちで自称「狗不理包子」が売られている。
そのため、「狗不理包子」はうまくも何ともない、という声もよく聞くのだが、一方で「本店は本当に美味い」と強く主張している人もいる。おそらく、この両者は食べているものがそもそも違うのだろう。
「麻花」は、「かりんとう」みたいなものである。ねじりドーナツ状の、硬い揚げ菓子である。これは、食べた誰もが「油っぽい」と口をそろえて言う。
出来立ての「耳朶眼」は確かに美味かった。しかし、あと2品については、私は今日、「天津三絶」によりふさわしいものがあるということを主張したい。
そのひとつとは、「果仁張」である。これは要するに甘い衣のついたピーナッツで、日本の森永チョコボールに近いといえば近いかもしれない。衣の味は何種類もあるが、スパイシーなものはあまり美味しくなく、甘い系のものが美味しいと私は思う。1度開封したらもう止まらない。
昨日バスに乗せてもらった訪中団の人たちにも買うように薦め、評判は上々であった。
もうひとつは、「百餃園」の餃子である。以前、初めて天津に来たときに、今日案内してくれた彼に連れて行ってもらった店なのだが、そのときの鮮烈な印象から、今回も連れて行ってくれるよう頼み、昨日の夕飯はここにしてもらった。そして、今日の夕飯も2日連続で、南開大学の日本人の友人とともに食べに行った。
『地球の歩き方』などのメジャーなガイドにも載っている店だが、ここの餃子は本格的に旨い。特に「猪肉三鮮」は豚肉とエビの絶妙なハーモニーがたまらない。また「津味素」は、しゃぶしゃぶのゴマだれのような味付けの野菜餃子で、他店では味わったことのない美味である。このほか、「蟹肉」も日本の高級なレトルト・カニシューマイのような感じで、非常に良い。
以上より私は、「天津三絶」の新メンバーは、「耳朶眼」が残留、「狗不理包子」と「麻花」は「百餃園」と「果仁張」に禅譲することを提言したい。
さて、旨いものの話をしていたら長くなってしまったが、今日は他にも、日、仏、英の租界地を歩いたり、「粤唯鮮集団」というレストランチェーンを経営する大富豪が建てて観光地化されている、砕いた骨董品で壁面全体をコーティングしたぶったまげた屋敷を見たり、自然博物館で海の生き物を鑑賞したりと、色々と活動したのである。
しかし、もう面倒くさくなってしまったので、そこらあたりの事情については割愛させていただきます。ご了承ください。