どうも北京のタクシー業界に何かが起こっているっぽい。
今日は学科の先生が北京にいらしており、同じくちょうど北京に来ていた学科の先輩とともに、後海のレストランで夕食をごちそうになってきた。
その会食中、ある日本人が北京空港から宿泊先のホテルにタクシーで向かう際に巻き込まれたトラブルの話を聞いた。
その人は中国語ができないため、目的地の住所と連絡先の書いた紙を運転手に見せ、行き先を指示したのだが、そのとき公安が外からやってきて、その目的地を見せるよう言ってきた。
その人は素直に公安に紙を渡したのだが、このときなぜかタクシーが急発進した。その人は紙がなければ行き先が分からないのでひどく狼狽し、怒って運転手に引き返すよう指示した。
ところが運転手はこれに耳を貸さず、走り続け、しまいにはメーターを切ってしまった。その人は運転手を怒らせておかしな場所に連れて行かれても困ると考え、途中から成り行きに身を任せることにした。
結局、タクシーは何事もなく目的地に到着し、運転手はその人に非礼をわび、料金を請求しなかったと言う。
この話、実はちょっと似た体験を私もしているのだ。
北京に着いた日、私たちは空港の正規のタクシー乗り場の長い列に並び、数十分かけて順番を待った。
乗車直前、公安が私に声をかけてき、どこまで行くのかを尋ねてきた。私は正直に行き先を答え、タクシーに乗り込んだ。公安は私の行き先をリストに書き込んでいたようだ。
すると、運転手は最初のうちのしばらくは妙に不機嫌で、なにやら私たちに説教をしてきた。そんなことはあいつに伝えるなとか、あいつらはお前を助けてくれるわけじゃないとか、そんな感じだったと思う。
そのときは何のことだかよく分からなかったのだが、今日の話を聞いておそらく事情が理解された。
つまり、タクシーの運転手たちは、公安が空港タクシーの利用客を管理しようとしていることに抵抗しているのだ。
客に恨みがあるわけでもなければ、ぼったくりを目的としているわけでもない。とにかく、「客が公安に行き先を告げてからタクシーに乗る」というスタイルに不快感を示しているのである。
なぜか?
公安の干渉を認めると、今後ぼったくりがしにくくなるからか?
あるいは、公安と癒着したぼったくりが横行し、業界の信用が崩れることを恐れているのか?
いまのところ、どちらに正義があるのかは判断がつきにくい。今後の動向に注目したい。
(写真は夜の後海)